(前回からの続き)
王家の男たちの食事
さて王が在宅の場合は、王家の男たちは誰もが皆、王と一緒に食事を摂(と)りました(*1)。
その中には王の姉の夫であるレフアヌイと、彼らの息子たち2人もいました。
息子たちは、健康で丸ぽちゃの幼い少年で、年齢は8歳と6歳位でした。
ワイアルアの魚が欲しい
ある日の朝食の後、ワイアルアに打ち寄せる波の轟(とどろき)が、はっきりと聞こえました。
そこで王はこう言いました。
「ワイアルアのウコア池の魚たちは、きっとマカハ(水門)に押し寄せているであろう(N.1)。
あー、アホレホレを何匹か欲しいものだ(N.2)。」
この王の言葉は、現実には義理の兄にこう命令したのと同じでした。
「お前があそこに行って、魚を取って来い。」
なぜなら、そこに居合わせた一番上位の首長が、義理の兄レフアヌイだったからです。
なおそこには、王の甥(おい)である2人も居ましたが、この仕事をするには、未だ幼(おさな)過ぎました。
レフアヌイがワイアルアに行く
こうして、キリキリウラの夫であるレフアヌイは、ワイアルアに行きました。
彼に随行したのは、彼自身の家族の召使いが数人、そして何人かの王直属の家臣でした。
彼らがマカハに行ってみると、そこには魚がぎっしり詰まっていました。
そして暫(しばら)くすると、彼らは忙しそうに、魚をすくい上げては洗って塩漬けにする作業に、没頭していました。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) ウコア池(Ukoa pond):
ウコア池は養魚池(fishpond)の一つで、ワイアルアの海岸付近にありました(*2)。
この池には女神ラニワヒネ(Lani-wahine)が住み、オオトカゲ(mo'o)の姿で人々の前に現れる、と伝えられています。
またこの池では不思議な魚を目にすることがあるそうです。例えば、左面はボラ(mullet)だが右面はヒメジ(kūmū)、という魚がいるのです.
(N.2) アホレホレ(aholehole)):
アホレホレはアホレ(ā.hole)の幼魚です。アホレはハワイ語名で、その学名 "Kuhlia sandvicensis"が示すように、ハワイの固有種です(*3)。
この魚は、時には悪霊を追い払う魔術に使われ、また時には「海の豚」と呼ばれて、豚に代わる供物として神に捧げられました。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 13.Oahunui. Mrs.E.M.Nakuina, p.139-146.
(*2) Pukui et al.(1974): Place names of Hawaii, Reviced and Expanded Edition, p.214.
(*3) M.K. Pukui, S.H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press.