夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

114 オアフヌイ:(1) バース・ストーン


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(新しいお話しの始め)

王家の子が生まれた場所

オアフ島エヴァとワイアルアの間には、広大な台地が広がっています(*1)。

 

 

この台地上で、カウコナフア橋からマウカに約1.6km離れた所に、

カニロコと呼ばれる、歴史的に重要な場所があります(N.1)(N.2)。

 

このクカニロコは、かつてオアフ島の王や支配者たちが、生まれた場所でした。

そして王家の家系の女性たちは皆、子供を生む前には、この場所に隠棲(いんせい)するのが義務でした。

 

万一、ここほど神聖では無い場所で子供を生めば、それはもう大変でした。

生まれてくる子は、身分・階級、地位、そして特権を剥奪(はくだつ)されるのです。

 

今もいくつかの石が残る

かつて王家の出産の儀式が行われた場所には、

数年前にはまだ、いくつかの石が立っていました。

 

そして恐らく今もまだ、壊されずに残っていることでしょう。

 

 

かつては最高位の神官の活動拠点

古代、この附近はタブーの地でした(N.3)。

というのは、この島の最高位の神官が、ここに本部を置いていたからです。

 

この神官自身、支配者階級一族の血筋を引いていました。

 

そして多くの場合、現国王の叔父または弟でした。

そうでなければ、王家と婚姻関係にありました。

 

さらにこの神官は、極めて大きい上に統制がとれて強力な、聖職者団体のトップでもありました。

 

そのため彼の影響力は絶大で、国王にも劣らぬほどでした。

そしていくつかの事柄については、彼の権力は最高で王にも優るものでした。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) マウカ(mauka):

マウカは、ウカ(uka)にマ(ma-)が付いたハワイ語です。このマウカとウカは共に、 「内陸側に,高台・高地方向に,山の方角に」 を意味します(*2)。

(N.2) クカニロコ(Kukaniloko):

日本では「クカニロコ・バースストーン」の名で知られる、有名なパワースポットです。また近くには、オアフ島で人気の観光スポット、ドール・プランテーションもあります。

1973年には、アメリカ合衆国国家歴史登録財(National Register of Historic Places(NRHP))に登録されました。

(N.3) タブーの地(taboo ground):

ここで言う「タブーの地」は、「神聖な立入禁止区域」と言い換えることが出来ます。

タブー(taboo)という語は、ポリネシアの独特な習慣を、キャプテン・クックが西欧社会に紹介した時に使った英語で、これに対応するハワイ語はカプ(kapu)です。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 13.Oahunui. Mrs.E.M.Nakuina, p.139-146.
(*2) M.K. Pukui, S.H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press.