(新しいお話しの始め)
王家の子が生まれた場所
オアフ島のエヴァとワイアルアの間には、広大な台地が広がっています(*1)。
この台地上で、カウコナフア橋からマウカに約1.6km離れた所に、
クカニロコと呼ばれる、歴史的に重要な場所があります(N.1)(N.2)。
このクカニロコは、かつてオアフ島の王や支配者たちが、生まれた場所でした。
そして王家の家系の女性たちは皆、子供を生む前には、この場所に隠棲(いんせい)するのが義務でした。
万一、ここほど神聖では無い場所で子供を生めば、それはもう大変でした。
生まれてくる子は、身分・階級、地位、そして特権を剥奪(はくだつ)されるのです。
今もいくつかの石が残る
かつて王家の出産の儀式が行われた場所には、
数年前にはまだ、いくつかの石が立っていました。
そして恐らく今もまだ、壊されずに残っていることでしょう。
かつては最高位の神官の活動拠点
古代、この附近はタブーの地でした(N.3)。
というのは、この島の最高位の神官が、ここに本部を置いていたからです。
この神官自身、支配者階級一族の血筋を引いていました。
そして多くの場合、現国王の叔父または弟でした。
そうでなければ、王家と婚姻関係にありました。
さらにこの神官は、極めて大きい上に統制がとれて強力な、聖職者団体のトップでもありました。
そのため彼の影響力は絶大で、国王にも劣らぬほどでした。
そしていくつかの事柄については、彼の権力は最高で王にも優るものでした。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) マウカ(mauka):
マウカは、ウカ(uka)にマ(ma-)が付いたハワイ語です。このマウカとウカは共に、 「内陸側に,高台・高地方向に,山の方角に」 を意味します(*2)。
(N.2) クカニロコ(Kukaniloko):
日本では「クカニロコ・バースストーン」の名で知られる、有名なパワースポットです。また近くには、オアフ島で人気の観光スポット、ドール・プランテーションもあります。
1973年には、アメリカ合衆国国家歴史登録財(National Register of Historic Places(NRHP))に登録されました。
(N.3) タブーの地(taboo ground):
ここで言う「タブーの地」は、「神聖な立入禁止区域」と言い換えることが出来ます。
タブー(taboo)という語は、ポリネシアの独特な習慣を、キャプテン・クックが西欧社会に紹介した時に使った英語で、これに対応するハワイ語はカプ(kapu)です。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 13.Oahunui. Mrs.E.M.Nakuina, p.139-146.
(*2) M.K. Pukui, S.H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press.