夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

110 プナホウの泉:(6) 水を引きたいのです


スポンサードリンク

(前回からの続き)

水浴びをしたい

ある日、双子の女の子・カウアキオワオが、男の子にこう言いました(*1)。

「私、水浴びをしたいわ。」

 

そして、水が少しも無い場所に住んだ辛さを訴えました。

それを聞いた男の子は、こう言って彼女を宥(なだ)めました。

 

「ここは安全な場所なんだ。

そして此処(ここ)なら、義母も探しに来ないと思うんだ。」

 

そうは言いながらも彼は、幾らかの水を彼女に手に入れてあげよう、と思ったのでした。

 

あの池から水を引こう

彼は日頃から、果実やグリーンズを探して、彼らが住む丘の近くを行き来していました。

ですから丘の東の方に、大きな雨水溜池があるのを知っていました。

 

その池はカナワイと呼ばれていました。

彼は時々そこに来ては、輪なわを使って、野生のアヒルを捕(つか)まえていました。

 

さらにまた彼は、水の神(モオ)・カケアに会ったことがあり、知り合いでした(N.1)。

この神はマノア渓谷とマキキ渓谷の、全ての水源を担当しその管理をしていました。

 

この水の神は、子供たちの母方の先祖の1人でした。

そして、ワアヒラの雨とは、とても親密な間柄にありました(N.2)。

 

 

水の神にお願いする

男の子はこの神を訪ねて行き、こうお願いしました。

 

「水路を開きたいのです、どうかお力をお貸して下さい。

あのカナワイの池から『ここ』までです。」

 

彼が『ここ』と指差したのは、彼と女の子が住むほら穴の前で、すぐ下にある場所でした。

高齢な水の神は、若い親族の願いを聞き入れた上に、こう約束してくれました。

 

「近くにある、ワイレレの泉の水を分けてあげよう、そしてお前が造る水路に流してあげよう。

そうすれば、お前の水路には永遠に水が流れ続けるだろう。」

(次回に続く)

 

 

(ノート)

(N.1) モオ(moo) : 

モオ(mo'o)は、アウマクア('aumakua)と呼ばれる守護神(家族神)の一つです。

アウマクアでは神となった先祖が、色々な動物・植物・物体に化身してこの世に現われます。その中で、小さなトカゲ、爬虫類、大蛇などに化身した守護神をモオと呼びます。モオには天候や水をコントロールする力があり、養魚池(fishpond)などに住むと言われます。

(N.2) ワアヒラの雨(Waahila rain) :

「ワアヒラの雨」 は、双子のうちの男の子である、カウアワアヒラ(Kauawaahila)の愛称です。

ワアヒラは 「ヌウアヌ渓谷とマノア渓谷に降る雨」を意味するので、ほぼ同地域の水源を担当する「水の神」と親密なのは、当然のことでしょう(*2)。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅻ. The Punahou Spring. Mrs. E. M. Nakuina, p.133-138

(*2) Pukui & Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press, Waʻa-hila(p.375).