夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

105 プナホウの泉:(1) 魅力的な双子と義理の母


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(新しいお話しの始め)

「ワアヒラの雨」  と  「山の霧」

その昔、カアラの山に、カハアケアと言う名の首長が住んでいました(*1)(N.1)。

 

 

彼には双子の子供、男の子と女の子がいましたが、母親は2人を産むと直ぐに死んでしまいました。

この男の子はカウアワアヒラ(ワアヒラの雨)、そして女の子はカウアキオワオ(山の霧)と呼ばれていました(N.2)(N.3)。

 

カハアケアは母のいないこの子らを、とても思いやり深く愛していました。

そしてしばらくすると、彼は新しい妻を迎えました。

 

その時、彼はこんな風に思ったのでした。

「これで子供たちにも、身の回りの世話をして愛情を注いでくれる、母親が出来た。」

 

2人を憎む義理の母

彼の新しい妻はハウェアと言い、前の夫との間に一人の男の子がいました。

その子は体が不自由で顔つきも醜い子でしたが、片や双子の2人はとても魅力的でした。

 

義理の母は彼らの魅力に、嫉妬するようになりました。

そして誰もが彼らに見惚(と)れることを、腹立たしく思いました。

 

それもそのはず、彼女の実の子には誰一人目を留めず、たまに見ても嫌(いや)そうな顔をされるだけでしたから。

 

父親が目の前にいる時は、彼女は双子にとても気を遣っていました。 

しかし心の中では強い憎しみを抱き、この上なく激しく彼らを嫌(きら)っていました。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) カアラ山(Kaala Mountains) :

カアラ山とは、オアフ島の西側を走るワイアナエ山脈(Wai'anae Range(/Mountains))の主峰の呼称です。標高は1,227mで、コオラウ山脈(Koʻolau Range)の山々を含めたオアフ島全体の最高峰です。

(N.2) ワアヒラ(Waahila):

「ワアヒラ」とは、ヌウアヌ(Nuʻu-anu)とマノア(Mānoa)の谷に降る雨の呼称です。また、マノアとパロロ(Palolo)の谷を分かつ尾根の名前でもあります(*2) 。

(N.3) キオワオ(Kiowao):

「キオワオ」とは、山などに降る冷たい雨で、風と霧を伴うものの呼称です。時には、ヌウアヌに降る雨を指すこともあります(*2)。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅻ. The Punahou Spring. Mrs. E. M. Nakuina, p.133-138.

(*2) Pukui & Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press, p.154,375.