(前回からの続き)
また義母が現われる
彼らの農作物が順調に実ってきた、ちょうどその時のことです(*1)。
あの義母がまたやって来て、彼らを見つけたのでした。
義母は双子の子供たちを、住んでいたほら穴から追い払った上に、
彼らが汗水たらして得た収穫物を、盗み取ったのでした。
プナホウの丘のほら穴へ
子供たちは、プナホウのすぐ裏にある、岩肌の丘へ逃げました(N.1)。
彼らはこの丘で、小さなほら穴を2つ見つけました。
そこで男の子と女の子は、それぞれ1つのほら穴に住みました。
このほら穴の周辺には、緩やかな起伏や小さな谷間が幾つもありました。
後に「プナホウ牧草地」の名で知られた地も同じでした。
しかしこれらの地は、彼らが住み始めた時、マ二エ二エ芝では覆われていませんでした(N.2)。
生い茂る灌木が食料
そこは言わば密林状態で、古くから自生する灌木(かんぼく)が生い茂っていました。
すなわち 丈の高いイリマ、アヘアへア、ポポロなどです(N.3)。
また所々にある空地は、マ二エ二エ・アキアキで覆われていますが、こちらは、かつては有益な薬草でした(N.4)。
これらの灌木は食用になる果実をつけ、花を咲かせます。
また葉や柔らかい新芽を、前にお話しした方法で調理すれば、栄養豊富で満足のいく食物になりました。
可愛そうな子供たちは、これらに加えてバッタ類、また時には野鳥を獲って食べていました。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) プナホウ(Punahou) :
プナホウは、ワイキキの北、マノア渓谷の入口にある場所の呼称です。現在この地は、オバマ元大統領の母校でもある、プナホウ・スクールがあることで知られています。
(N.2) マ二エ二エ芝(manienie grass) :
マ二エ二エ芝はバミューダ・グラスの名で世界中に知られており、日本でも牧草や芝生として広く用いられています(学名:Cynodon dactylon, 英名:Bermuda grass, 和名:ギョウギシバ)。
(N.3) イリマ(ilima) :
イリマの樹高は通常1m程度ですが、実際は環境によって大きく異なり、時には3mにもなると言われます。花弁と根は古くから、病気による衰弱の回復に効くとされました。かつては王族だけが身につける高貴な花でしたが、今ではオアフ島の花にも指定され、多くの人々に親しまれています(学名:Sida fallax)。
(N.4) マ二エ二エ・アキアキ(manienieakiaki) :
マ二エ二エ・アキアキはハワイに自生する在来種で、薬草として乳幼児の舌などに白い斑点が出来る、感染症の治療に使われました(学名:Sporobolus virginicus, 英名:seashore dropseed)。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅻ. The Punahou Spring. Mrs. E. M. Nakuina, p.133-138.