(前回からの続き)
クカオオの丘に住む
しかし、彼らは走ってそこから逃げ出しました(*1)。
そしてクカオオの丘の斜面にある、小さなほら穴に隠れたのでした。
この丘の上には、メネフネたちの神社がありました(N.1)。
暫(しばら)くの間、彼らはここに住んで、サツマイモ畑を耕しました。
この時期の彼らの食料は、バッタやグリーンズでした。
グリーンズとは、植物の葉と柔らかい新芽のことです。その植物とは、ポポロ、アヘアへア、パカイ、ラウレレ、そしてポテト・バインでした(N.2)。
これらを調理するには、覆(おお)いをした容器の中で、食材の周囲や間に、熱い石を転がしました。
この調理法はプホロホロと呼ばれています(N.3)。
聖なるカプと自由なノア
ジャガイモが食べ頃になると、男の子(ワアヒラの雨)はダブル・イム(オーブン)を作りました。
このイムには2つのスペース、「カプ」と「ノア」がありました。
「カプ」は神聖なスペースで、男の子の食物用でした。
一方、「ノア」は自由スペースで、女の子用でした。
彼らが住んでいた小さなほら穴も、同様に2つに分けられ、
神聖なスペースは男の子用、そして、自由スペースは女の子用でした。
今も残るほら穴とイム
そのほら穴は、今も見ることが出来ます。
そしてつい数年前まで、内部を2つに仕切った石の壁も、元のまま残っていました。
同じように、ダブル・イムも残っていました。
その昔、男性の食事の場に女性が姿を見せることは、何処(どこ)であろうとタブーとされ、厳しく禁じられていたのでした。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) メネフネたちの神社(the temple of the Menehunes) :
本文の「メネフネたちの神社」は、現在は 石積の壁が復元されて「クカオオ・ヘイアウ (Kukaoo Heiau) 」と呼ばれ、国家歴史登録財の一部に指定さています。場所は C.M.クックJr.邸 がある、マノア・ヘリテージ・センター(2859 Manoa Rd.) 内です。
(N.2) グリーンズ (greens) :
グリーンズとは葉菜類を指す英語、ここでは5種類の植物名を列挙していますが、最初の4種類はハワイ語名、最後の1種類は英名です。
・ポポロ(popolo)は、かつてハワイでは、若い新芽や葉を グリーンズとして食べました。一方、日本では「ナスに似ているが役に立たない」として、バカナスとも呼ばれるそうです(和名:イヌホウズキ)(学名:Solanum nigrum) 。
・アヘアへア(aheahea)は、ハワイの固有種でハワイの大半の島で見られ、葉は食用とされて来ました(学名:Chenopodium oahuense)。
・パカイ(pakai)は、ハワイだけでなく、ジャマイカ、インドなどでも葉が食用とされています。日本でもよく見られますが、雑草とされています(和名:ホナガイヌビユ)(学名:Amaranthus viridis)。
・ラウレレ(laulele)は、かつてハワイでは大飢饉(ききん)などに、葉を食べました(学名:Asclepias curassavica)。
・ポテト・バイン(potato vine)は、白から薄紫に咲く花が人気で、主に観賞用に栽培されています(和名:ツルハナナス)(学名:Solanum laxum)
(N.3) プホロホロ(puholoholo) :
プホロホロは、最後のホロを省略した「プホロ」と同じ意味です。かつては、グリーンズだけでなく肉や魚もこの方法で調理されました。魚の場合は、まず容器内に魚を横に寝かせて、その上に熱い小石を置きます。次にもう一匹の魚を寝かせたら、容器をしっかり閉じて蒸気を閉じ込め続けます。ここで、小石の直径は2.5cm程度だそうです(*2)。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅻ. The Punahou Spring. Mrs. E. M. Nakuina, p.133-138.
(*2) M.Titcomb and Pukui(1951): Memoir29, Native use of fish in Hawaii, Journal of the Polynesian Society, Vol.60, p.25.