夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

108 プナホウの泉:(4) クカオオの丘とカプ


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(前回からの続き)

クカオオの丘に住む

しかし、彼らは走ってそこから逃げ出しました(*1)。

 

そしてクカオオの丘の斜面にある、小さなほら穴に隠れたのでした。

この丘の上には、メネフネたちの神社がありました(N.1)。

 

暫(しばら)くの間、彼らはここに住んで、サツマイモ畑を耕しました。

この時期の彼らの食料は、バッタやグリーンズでした。

 

 

グリーンズとは、植物の葉と柔らかい新芽のことです。その植物とは、ポポロ、アヘアへア、パカイ、ラウレレ、そしてポテト・バインでした(N.2)。

 

 

これらを調理するには、覆(おお)いをした容器の中で、食材の周囲や間に、熱い石を転がしました。

この調理法はプホロホロと呼ばれています(N.3)。

 

聖なるカプと自由なノア

ジャガイモが食べ頃になると、男の子(ワアヒラの雨)はダブル・イム(オーブン)を作りました。

このイムには2つのスペース、「カプ」と「ノア」がありました。

 

「カプ」は神聖なスペースで、男の子の食物用でした。

一方、「ノア」は自由スペースで、女の子用でした。

 

彼らが住んでいた小さなほら穴も、同様に2つに分けられ、

神聖なスペースは男の子用、そして、自由スペースは女の子用でした。

 

今も残るほら穴とイム

そのほら穴は、今も見ることが出来ます。

 

そしてつい数年前まで、内部を2つに仕切った石の壁も、元のまま残っていました。

同じように、ダブル・イムも残っていました。

 

その昔、男性の食事の場に女性が姿を見せることは、何処(どこ)であろうとタブーとされ、厳しく禁じられていたのでした。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) メネフネたちの神社(the temple of the Menehunes) :

本文の「メネフネたちの神社」は、現在は 石積の壁が復元されて「クカオオ・ヘイアウ (Kukaoo Heiau) 」と呼ばれ、国家歴史登録財の一部に指定さています。場所は C.M.クックJr.邸 がある、マノア・ヘリテージ・センター(2859 Manoa Rd.) 内です。

(N.2) グリーンズ (greens) :

グリーンズとは葉菜類を指す英語、ここでは5種類の植物名を列挙していますが、最初の4種類はハワイ語名、最後の1種類は英名です。

・ポポロ(popolo)は、かつてハワイでは、若い新芽や葉を グリーンズとして食べました。一方、日本では「ナスに似ているが役に立たない」として、バカナスとも呼ばれるそうです(和名:イヌホウズキ)(学名:Solanum nigrum) 。

・アヘアへア(aheahea)は、ハワイの固有種でハワイの大半の島で見られ、葉は食用とされて来ました(学名:Chenopodium oahuense)。

・パカイ(pakai)は、ハワイだけでなく、ジャマイカ、インドなどでも葉が食用とされています。日本でもよく見られますが、雑草とされています(和名:ホナガイヌビユ)(学名:Amaranthus viridis)。

・ラウレレ(laulele)は、かつてハワイでは大飢饉(ききん)などに、葉を食べました(学名:Asclepias curassavica)。

・ポテト・バイン(potato vine)は、白から薄紫に咲く花が人気で、主に観賞用に栽培されています(和名:ツルハナナス)(学名:Solanum laxum)

(N.3) プホロホロ(puholoholo) :

プホロホロは、最後のホロを省略した「プホロ」と同じ意味です。かつては、グリーンズだけでなく肉や魚もこの方法で調理されました。魚の場合は、まず容器内に魚を横に寝かせて、その上に熱い小石を置きます。次にもう一匹の魚を寝かせたら、容器をしっかり閉じて蒸気を閉じ込め続けます。ここで、小石の直径は2.5cm程度だそうです(*2)。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅻ. The Punahou Spring. Mrs. E. M. Nakuina, p.133-138.

(*2) M.Titcomb and Pukui(1951): Memoir29, Native use of fish in Hawaii, Journal of the Polynesian Society, Vol.60, p.25.