(新しいお話の始まり)
川から水を引こう!
ピーはカウアイ島のワイメアに住む平民でした(N.1)(*1)。
彼はワイメア川にマノ(ダム)を造り、そこからキキアオラの近くまで、水路を引きたいと思っていました(N.2)。
この計画を実行するために、彼は初めに、それに最も適した場所を探しました。
メネフネに助けを請う
場所が決まると、ピーは次に山に登って行きました。
そして、プウカペレの近くに住む全てのメネフネたちに、こう命令しました(N.3)。
「ダムと水路を造りたいんです。そのための石を準備して下さい。」
するとメネフネたちは手分けして、早速その仕事を始めました。
ある者は石を集め、またある者は集まった石を切る、と言った具合です。
こうして、工事に必要な材料はどれもこれも、あっという間(マナワ・オレ)に揃(そろ)いました(N.4)。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) ピーは平民 (ordinary man):
当時のハワイは厳格な階級社会で、人々は皆、次の4階級のいずれかに属していました。
首長(aliʻi ;chiefs), カフナ(kahuna; priests and experts), 平民(makaʻāinana; working people), 奴隷(Kauā; outcasts).
そのなかで、このお話しの主人公ピーは 「平民(ordinary man)」 とされています。
ただし、このお話しにも幾つかのバージョンがあり、ピーを首長(chief)としたり、カフナ(Kahuna)とする例も見られます。
もしもピーが首長ならば、彼はメネフネの子孫でもあるので、ご先祖様であるメネフネに仕事をお願いしたり姿を見ることも出来ます。
(N.2) ワイメア(Waimea) :
ハワイ諸島主要8島の中で、最北端にあるのがカウアイ島です。
ワイメアはその島の南西部にある町の名前ですが、湾、川、そして渓谷の名前でもあります。
なおワイメアは、ハワイ諸島を初めて発見した西欧人である、キャプテン・クックが初上陸した地としても有名です。
(N.3) プウカペレ(Puukapele) :
プウカペレは、ワイメア渓谷の奥深くに座す標高約1,120mの山です。
プウカペレ森林保護区域内にあり、かつワイメア・キャニオン州立公園内でもあります。
なお、ワイメア・キャニオンは太平洋のグランド・キャニオンとも呼ばれ、カウアイ島きっての景勝地です。
公園内には5つの展望台があり、その中の1つはプウカペレ展望台と呼ばれています。
(N.4) マナワ・オレ(manawa ole):
マナワ・オレはハワイ語で、"manawa(時間) + ole(無し) " ですから、 「瞬時」 を意味します。
(注記)
(*1) T.G.Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, X. Stories of the Menehunes, Pi's Watercourse Thos.G.Thrum, p.110-111.