夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

118 オアフヌイ:(5) 旅人を狙え


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(前回からの続き)

旅人を狙(ねら)え

王家の訪問者は、あの特別なご馳走をしきりに欲しがりました(*1)。

そのためロ・アイカナカは、あちこちに戦士を送らねばなりませんでした。

 

まずは峠、リフエとカレナからワイアナエに通じる峠です、

そしてさらに寂しい小道、ワイメア方面でカラキニに通じる小道です(N.1)。

 

彼らはそこで、ラーイー、アアホ、あるいはシダの後ろに隠れると、

1人旅の人や仲間から遅れた人を狙(ねら)って、待ち伏せしたのでした(N.2)(N.3)。

 

 

これらの旅人たちは、筋骨たくましいロ・アイカナカの男たちの、いい鴨(かも)になりました。

--- 何と言っても彼らは、ルアの(骨をへし折って殺す)技(わざ)の達人だったのですから(N.4)。

 

南方の首長が怪しい

このような事が幾度か続いて起こり、遂には数え切れないほど、多くの人が姿を消しました。

やがてこの失踪(しっそう)は、南方の首長が頻繁に行う催し物と関連があるのでは? と疑われ始 めました。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) ワイアナエ(Waianae)、ワイメア(Waimea):

ワイアナエはオアフ島西岸にあるかつて栄えた集落で、このお話の舞台(オアフヌイなど)から見ると、ワイアナエ山脈を越えた先にあります。

ワイメアはオアフ島北岸にあり、かつてはカフナ・ヌイ(最高位の神官)の地とされ、オアフ島の宗教・文化の中心でした。このお話の舞台から見ると、コオラウ山脈に沿ってひたすら北に進み、海に出る前に通る渓谷がワイメアです。

(N.2) ラーイー(la-i):

ラーイーはハワイ語 "lau kī" の短縮形です(*2)。後者は、lau=葉 と ki=キー(植物のハワイ語名) の合成語ですから、ラーイー(la-i=lau ki=)は「キーの葉」を意味します。

また、キー(ki) は ティー(ti) とも呼ばれるので、ラーイーは 「ティーの葉 = ティー・リーフ」 とも呼ばれます。なお参考までに、ラーイーの 学名は "Cordyline fruticosa"、 和名は「センネンボク」です。

(N.3) アアホ(aaho):

アアホはハワイ語で、柵(さく)の杭材を結んで横向きに伸びる、板状または棒状の部材を示します(*2)。

(N.4) ルア(lua):

ルアはハワイの伝統的な格闘技で、相手と組み合って闘(たたか)います。相手の骨を折ったり、関節を外したり、また、神経中枢を圧迫して激痛を与えたりします。多くの技(わざ)は秘密とされており、このルアの達人たちは、首長のボディーガードでもありました(*2)。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 13.Oahunui. Mrs.E.M.Nakuina, p.139-146.

(*2) M.K. Pukui, S.H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press.