(前回からの続き)
この豚肉は美味(うま)い
礼を尽くしたご馳走会の返礼として、今度は南方の首長が饗宴を催しました(*1)。
そして、王はこのよそ者たちと一緒に、豪華な食事をとりました。
ここで王の前に出されたメイン料理は、見かけは豚肉のようでした。
しかし本当は豚肉ではなく、人間の肉だったに違いない、と強く疑われたのでした。
王はこの料理が彼の好みにピッタリだと感じて、大いに気に入りました。
そして首長ロ・アイカナカに、それとなくこう言いました。
「あなたのアイプウプウ(料理長もしくは執事)は、王家のコックよりも一枚上手だ。
豚肉の下拵(したごしら)えや調理方法を、より良く理解している。」
ロ・アイカナカは王の新しい友
ロ・アイカナカは、これだ!と気付きました。
こうして若い王は極めて頻繁に、この南国人の食卓の客になったのでした。
と言っても、実際に料理が並んだのは食卓ではなく、床に敷かれたマットの上でした。
ところで、王家のお客様をお招きするには、何らかの大義名分が掲げられたことでしょう。
例えば 「コナネ(西洋碁に似たゲーム)のお手合わせを、王にお願いする。」 などです。
また、さまざまな運動や戦闘的スポーツの、競技会が企画されたことでしょう。
そしてオアフヌイには審判をお願いしたり、また単にご観戦頂いただけかも知れません。
当然のことですがこの手の友好訪問では、スポーツや食事が終わった後も、王は暫(しばら)くの間そこに留まり、ご歓談されると期待されたことでしょう。
このように、あれこれとかこつけては、王はかなり多くの時間を、この新しい臣民で友人でもある人たちと過ごしました。
(次回に続く)
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 13.Oahunui. Mrs.E.M.Nakuina, p.139-146.