夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

170 カアラとカアイアリイ:(24) 彼女の行方を問いただす


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(前回からの続き )

断崖上で彼女を待つ

カアラの姿が谷間に消えてから、ずっと後のことです(*1)。

カアイアリイが断崖上に立ち、愛する人が出かけて行った、あの丘の斜面の小径を見上げていました。

 

その夜、彼はほんの少しマットの上で寝た後、  海辺を歩いていました。

 

そして夜明けにはあの断崖にやって来て、再びそこに登ったのでした。

彼の愛する人が丘を下りて来るのを、しっかり見守ろうとしたのです。

 

現われたのはウアだった

目を凝(こ)らすと、木の葉のスカートが風になびいていました。

彼は可愛い彼女を思い切り抱き締めようと、胸を躍(おど)らせました。

 

しかし、カールした眉(まゆ)毛が近づくにつれて、彼の心は沈んで行きました。

それは彼が愛する人ではなく、ある悲しい知らせを顔に浮かべた、彼女の友達ウア(雨)だったからです(N.1)。

 

なぜカアラは戻らないのだ

報われぬ恋に悩む首長カアイアリイは遂に、大急ぎでまた必死に尋ねるような眼差しで、若い女性の使者に会いました。

 

そして大声で叫びました。

「なぜカアラは、この谷に戻るのが遅れているのだ?

 

ひょっとすると、彼女が別の男の首に花輪を巻いて、私を破滅させようとしているのか?

それとも、イノシシに引き裂かれてしまったのか?

 

そうでなければ、死の呪術(じゅじゅつ)者アナアナが、彼女の心臓に襲いかかったのか(N.2)。

そして彼女は、冷たくなってマハナの芝生の上に横たわっているのか?

 

とにかく早く話してくれ、ウア。

君の顔を見ると、もう耐えられないのだ!」

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) ウア(Ua): 

ここでのウアは、カアラの友達である女性の名前です。一方、一般的には、ウアは 「雨」を意味するハワイ語です。ハワイには雨を表現する語が沢山ありますが、その中の一つ、ハワイ島ヒロに降る霧雨を表現する語、カニレフア(Kani-lehua)もよく知られています。


(N.2) アナアナ(anaana):

アナアナは、祈祷と呪文による邪悪な魔術を指すハワイ語で、黒魔術(black magic)とも呼ばれます。このアナアナの前に専門家を指す語「カフナ」を冠した、カフナ・アナアナ(kahuna ʻanāʻanā)は、人を呪い殺す呪術の専門家で、人々から大変恐れられていました(*2)。

 

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.

(*2) M. K. Pukui et al.(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press.