夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

168 カアラとカアイアリイ:(22) 恐怖の洞窟内


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(前回からの続き )

恐ろしい動物たち

死肉をあさるカニたちは、しずくが垂れる湿っぽい石の上を這(は)い回ると、姿を消してしまいました(*1)。

 

 

お次は忌(い)まわしいウツボ、今にも咬(か)みつきそうな勢いです。

鋭い歯が並ぶ大きく開いた口をゆっくりと伸ばし、彼女の柔らかな足を引きちぎろうとしています。

 

そして、このウツボが口を出している穴こそが、恐れ多い海の神が棲(す)む、恐ろしい隠れ家なのです。

 

カアラがへたり込む

かわいそうな少女(カアラ)は、この薄暗い岸辺にへたり込んでしまいました。

そしてカナカの膝にしがみつきながら、こう叫びました(N.1)。

 

「ああ、お父様。どうか私の脳を、このギザギザした石で叩(たた)きつぶして下さい。

 

そして私が死ぬまでは、あのウツボには私の首に巻き付かせないで下さい。

それに私の体の上を忌(い)まわしくぬるぬると、そして忍び寄るようにゆっくりと這うのは、やめさせて下さい。

 

ああ、私の息が絶えるよりも前に、カニたちが私を突(つつ)いて、引きちぎるでしょう。」

 

救いの道はある

「良く聞くんだ。」 と父オプヌイが言いました。
「私と一緒に、暖かくて日の当たる所に戻してあげよう。

 

もう一度、あの甘い香りの花が咲き誇る、パラワイ谷を歩かせてあげよう。

そしてお前の首に、香り高いジャスミンの花輪をかけさせてあげよう。

 

しかしそのためには、私と一緒にオロワルの首長の家に行かねばならぬ。

 

そしてそこで、お前の血生臭いご主人に見せつけるのだ。

-- お前が、もう1人の首長に抱かれて愛を交わすところを。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) カナカ(kanaka): 

有史以前、ポリネシア人が太平洋を渡ってハワイに住み着きました。そしてハワイの先住民となった彼らは、自分たちのことをカナカ(または カナカ・マオリ)と呼びました。本文では、カアラの父オプヌイのことをカナカと呼んでいます。

 

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.