(前回からの続き )
カアラの愛は死よりも強い
「絶対に駄目!」
カアイアリイを愛するカアラが叫びました(*1)。
「私には、あの私の首長との愛が全てなの。
これから先、彼以外で私が深く愛する人と出会うことなど、絶対にないわ。
もしも私がもう2度と、私の頭を彼の胸に預けることが出来ない、と言うならば、その頭をこの冷たい石の上に置いて、死んでしまいましょう。
もしも彼の腕がもう2度と、私を彼の胸に引き寄せることがないならば、その時は私の首にウツボを巻き付かせて、私の両頬を引き裂かせて下さい。
私の愛するお方の前で、よその人に私の顔を触らせるよりも、この方がずーっとましですから。」
父オプヌイの心が決まる
「よし、それならウツボと仲良くするがいい。」 と、オプヌイが怒鳴(どな)りました。
そして、両膝にしがみつく彼女の柔らかい腕を、荒々しく振り放しながら、こう続けました。
「そうしていれば、オロワルの首長がお前を捕まえに来る。
そして、マウイ島の丘にある彼の家に連れて行くだろう。
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お前はここで待つんだ<
この洞窟から抜け出そう、などとするんじゃないぞ。
わかっているだろうが、お前の弱々しい腕では、この流れの速い水路を泳ぎ切るのは無理だ。
もしも、そんなことをすれば、ギザギザした岩で全身が切り裂かれてしまうぞ。
すぐにお前を連れに来させるから、それまでここに居るんだ。そして生きるんだ。」
こう言うと、彼は泡立つ深い淵(ふち)に素早く飛び込み、両腕で力強く水を掻き続けました。
そして間もなくすると、彼はもとの岸辺に戻って来ました。
(次回に続く)
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.