夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

169 カアラとカアイアリイ:(23) カアラを残し父が去る


スポンサードリンク

(前回からの続き )

カアラの愛は死よりも強い

「絶対に駄目!」
カアイアリイを愛するカアラが叫びました(*1)。

 

「私には、あの私の首長との愛が全てなの。

これから先、彼以外で私が深く愛する人と出会うことなど、絶対にないわ。

 

もしも私がもう2度と、私の頭を彼の胸に預けることが出来ない、と言うならば、その頭をこの冷たい石の上に置いて、死んでしまいましょう。

 

もしも彼の腕がもう2度と、私を彼の胸に引き寄せることがないならば、その時は私の首にウツボを巻き付かせて、私の両頬を引き裂かせて下さい。

 

私の愛するお方の前で、よその人に私の顔を触らせるよりも、この方がずーっとましですから。」

 

父オプヌイの心が決まる

「よし、それならウツボと仲良くするがいい。」 と、オプヌイが怒鳴(どな)りました。

 

そして、両膝にしがみつく彼女の柔らかい腕を、荒々しく振り放しながら、こう続けました。

 

「そうしていれば、オロワルの首長がお前を捕まえに来る。

そして、マウイ島の丘にある彼の家に連れて行くだろう。

 

 

お前はここで待つんだ<

この洞窟から抜け出そう、などとするんじゃないぞ。

 

わかっているだろうが、お前の弱々しい腕では、この流れの速い水路を泳ぎ切るのは無理だ。

もしも、そんなことをすれば、ギザギザした岩で全身が切り裂かれてしまうぞ。

 

すぐにお前を連れに来させるから、それまでここに居るんだ。そして生きるんだ。」

 

こう言うと、彼は泡立つ深い淵(ふち)に素早く飛び込み、両腕で力強く水を掻き続けました。

そして間もなくすると、彼はもとの岸辺に戻って来ました。

(次回に続く)

 

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.