夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

237 カレレアルアカ:(12) カウアイ島へ戻る


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(前回からの続き)

その子が生後約2ヶ月の時、大空が厚い雲に覆われ、ほら、稲妻と地震を伴った激しい嵐が近づいて来ました(*1)。

 

 

カオペレは深海のじめじめしたベッドで目を覚まし、両足を縛った紐(ひも)をほどくと、超人的パワーで海水を3掻(か)きして海面に浮上しました。

 

そこで彼は、遥(はる)か彼方のカウアイ島、そしてオアフ島に目をやりましたが、妻子を愛する強い想いが、彼をカウアイ島に向かわせました。

 

夜の暗闇の中で妻の寝床の脇に立つと、彼は手探りで彼女を探しながら、べとべとした気持ち悪い手で、彼女の額に触れました。

 

驚いた彼女が目を覚ますと、目の前の男が 「自分はお前の夫だ。」 と名乗ったので、彼女は恐怖のあまり 「カオペレの幽霊が出た!」 と悲鳴を上げ、両親の元へ走り去りました。

 

「その男は確かに自分の夫だ。」と彼女が確信したのは、蝋燭(ろうそく)が灯(とも)された後のことでしょう。

 

一方、義理の両親は、自分たちの冷酷な振る舞いを、恐ろしくまた恥ずかしく思って逃走し、以後この地に戻りませんでした。

 

そしてカオペレはこの時以降、2度とトランス状態に入ることはなく、この素晴らしい美徳は彼の体から外に出て、少年カレレアルアカの体に移り住んだのでした。

(次回に続く)

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, IX. Kalelealuaka. Dr. N. B. Emerson, p.74-106.