夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

026 太陽を捕まえる:(1) カパ布も作れない


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(新しいお話しの始め)

西マウイ北岸に住む

マウイは、ヒナ・ラウ・アエとヒナの間に生まれた息子でした(*1)(N.1)。

 

彼らはマカリアと呼ばれる場所に住んでいました。

そこは西マウイのカハクロアの上方、すなわち山側にありました(N.2)。

 

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カパ作りに追われる母

さて、マウイの母ヒナは、カパ布を何枚も作っていました(N.3)。

 

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カパを次々と広げて、乾かそうとした時のことです。

昼の長さが、あまりにも短か過ぎたのです。

 

彼女は毎日、カパを外に吊るしては、家の中に取り込みました。

その作業は、何枚ものカパが乾き切るまで、来る日も来る日も続きました。

 

彼女はこの大変な作業に、困り果てていました。

 

マウイが立ち上がる

これを見たマウイは、母がとても可哀想になりました。

と言うのは、昼があまりにも短か過ぎるからです。

 

カパを干そうとして彼女が、やっとのことで全部広げ終えると、もう太陽は沈んでいるのです。

そして彼女は、再びカパを取り込まねばならないのです。

 

こうしてマウイは、太陽をゆっくり進ませる、ことに決めたのでした。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) ヒナ(Hina), ヒナ・ラウ・アエ(Hina-lau-ae):

ヒナはこのお話しの主人公マウイの母です。なお、ヒナは広くポリネシアで知られる女神で、ハワイの伝説にもしばしば登場します。

ヒナ・ラウ・アエはマウイの父で、その名は "Hina(=マウイの母)"と"lau.a'e(=(英)beloved)"から成っています。但し父の名は他にもあり、アカラナ(Akalana)などが知られています(*2)。

(N.2) カハクロア(Kahakuloa):

カハクロアは、マウイ島西マウイの北岸にある村です。この村は周囲の地域と隔絶されており、人々は今も昔ながらの、ほぼ自給自足の生活をしているそうです。

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(N.3) カパ(kapa):

カパは樹皮で作ったハワイの伝統的な布地です。かつてのハワイでは、衣服やシーツのほとんどが、このカパ布から作られました。

この布地はポリネシアで広く見られ、タヒチではタパ(tapa)と呼ばれます。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales,Ⅱ.Exploits of Maui. Rev.A.O.Forbes, Ⅰ. Snaring the Sun, p.31-33.

(*2) W.D. Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina. IV.Maui Snaring the Sun.