(前回からの続き)
メネフネたちに出会う
ケクプアは、首長カカエのこと細かな指示の全てに、忠実に従いました(*1)。
彼はプウヌイまでやって来ると、そこで日が暮れるまで待ちました。
すると、人間の声らしきものが、大勢でハミングするのが聞こえて来ました。
そこで彼はさらに前進して、アレワの斜面近くを上って行きました(N.1)。
ちょうどその時、彼はついにこの素晴らしい人たち、メネフネ、に出会ったのでした。
彼らは普通の人間のようでしたが、体つきは小柄でした。
プウヌイの東側の流れを下れ
ケクプアはメネフネたちに、こう指示しました。
「カヌーは、プウヌイの流れの中の 、『ナエ』に沿って引き出すんだ(N.2)。
そう、ここから見たら遠い方の流れだ。」
こうしてメネフネたちは、指示されたコースに沿って、カヌーを運んで行きました。
ところが、はるばるワイカハルル近くのカアラアまで来た時(N.3)、
夜が明けて太陽の光がさし込み始めたのでした。
夜が明けカヌーはとり残された
するとメネフネたちは、運んでいた重い荷物をその場に置いたまま、ワオラニに戻ってしまったのでした。
そのためカヌーは溝の中にとり残され、それから何世代もの間、そのまま放置されていました。
人々は首長カカエの家臣(ケクプア)に敬意を表して、このカヌーのことを 「カワア・ア・ケクプア」、すなわち 「ケクプアのカヌー」 と呼びました。
またこのお話しでは、メネフネたちの助けを借りたにも拘(かかわ)らず、カカエの妻は望みを叶(かな)えることが出来ませんでした。
(終わり)
(ノート)
(N.1) アレワの斜面(slope of Alewa):
アレワの斜面とは、プウヌイ(Puunui)地域の西側境界をなす尾根に通じる斜面、と推測されます。
現在、この尾根の谷筋(すじ)に沿うように、アレワ・ドライブ(Alewa Dr.)と言う名の道路が伸びているからです。
(N.2) ナエ(nae):
ナエとは、東側または風上側、を意味する語です(*2)。
本文中の『ナエ』とは、アレワの斜面から見下ろした場合の「東側(の流れ)」ですから、現在のヌウアヌ(Nu'uanu)川を指していると思われます。
(N.3) ワイカハルル(Waikahalulu):
ワイカハルルは、現在は 「ワイカハルルの滝」がある場所、として知られています。
ヌウアヌ川の河口から約1kmほど上流にあり、滝の周囲はリリウオカラニ植物園(Liliʻuokalani Botanical Garden)として整備されています。
ケクプアのカヌーはここまで引き出されたのですから、海辺まであと一歩という所でした。
(注記)
(*1) T.G.Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, X. Stories of the Menehunes, Kekupua's Canoe Thos.G.Thrum, p.114-116.
(*2) Scott A.B. et al.(2015): Final, Archaeological Literature Review and Field Inspection for the Dowsett Highlands Relief Sewer Project Nu‘uanu Ahupua‘a, Honolulu District, O‘ahu, 3.2.12 Kekupa's Canoe, p.24.