夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

022 ケクプアのカヌー:(4) 道なかばで夜が明ける


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(前回からの続き)

メネフネたちに出会う

ケクプアは、首長カカエのこと細かな指示の全てに、忠実に従いました(*1)。

 

彼はプウヌイまでやって来ると、そこで日が暮れるまで待ちました。

すると、人間の声らしきものが、大勢でハミングするのが聞こえて来ました。

 

そこで彼はさらに前進して、アレワの斜面近くを上って行きました(N.1)。

ちょうどその時、彼はついにこの素晴らしい人たち、メネフネ、に出会ったのでした。

 

彼らは普通の人間のようでしたが、体つきは小柄でした。

 

プウヌイの東側の流れを下れ

ケクプアはメネフネたちに、こう指示しました。

「カヌーは、プウヌイの流れの中の 、『ナエ』に沿って引き出すんだ(N.2)。

そう、ここから見たら遠い方の流れだ。」

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こうしてメネフネたちは、指示されたコースに沿って、カヌーを運んで行きました。

ところが、はるばるワイカハルル近くのカアラアまで来た時(N.3)、

夜が明けて太陽の光がさし込み始めたのでした。

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夜が明けカヌーはとり残された

するとメネフネたちは、運んでいた重い荷物をその場に置いたまま、ワオラニに戻ってしまったのでした。

 

そのためカヌーは溝の中にとり残され、それから何世代もの間、そのまま放置されていました。

人々は首長カカエの家臣(ケクプア)に敬意を表して、このカヌーのことを 「カワア・ア・ケクプア」、すなわち 「ケクプアのカヌー」 と呼びました。

 

またこのお話しでは、メネフネたちの助けを借りたにも拘(かかわ)らず、カカエの妻は望みを叶(かな)えることが出来ませんでした。

 

(終わり)

 

(ノート)

(N.1) アレワの斜面(slope of Alewa):

アレワの斜面とは、プウヌイ(Puunui)地域の西側境界をなす尾根に通じる斜面、と推測されます。

現在、この尾根の谷筋(すじ)に沿うように、アレワ・ドライブ(Alewa Dr.)と言う名の道路が伸びているからです。

(N.2) ナエ(nae):

ナエとは、東側または風上側、を意味する語です(*2)。

本文中の『ナエ』とは、アレワの斜面から見下ろした場合の「東側(の流れ)」ですから、現在のヌウアヌ(Nu'uanu)川を指していると思われます。

(N.3) ワイカハルル(Waikahalulu):

イカハルルは、現在は 「ワイカハルルの滝」がある場所、として知られています。

ヌウアヌ川の河口から約1kmほど上流にあり、滝の周囲はリリウオカラニ植物園(Liliʻuokalani Botanical Garden)として整備されています。

ケクプアのカヌーはここまで引き出されたのですから、海辺まであと一歩という所でした。

 

(注記)

(*1) T.G.Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, X. Stories of the Menehunes, Kekupua's Canoe Thos.G.Thrum, p.114-116.

(*2) Scott A.B. et al.(2015): Final, Archaeological Literature Review and Field Inspection for the Dowsett Highlands Relief Sewer Project Nu‘uanu Ahupua‘a, Honolulu District, O‘ahu, 3.2.12 Kekupa's Canoe, p.24.