(前回からの続き)
このようにメネフネたちがカヌーを完成させ、海へ引き出す準備が出来ました(*1)。
しっかり見張るんだぞ
そこで首長のカカエはケクプアと従者たちに、
「しっかり見張るんだぞ。」 と言って、次のように指示しました。
「カヌーの先端部『プ』には、ロープを持った男が2人いるだろう。
1人はカヌーの右舷と左舷の間を、素早く行き来するだろう。
そいつがこの仕事の棟梁で、『パレ』と呼ばれる奴だ(N.1)。
さらに後ろには、ガイド・ロープを持った男が何人かいるだろう。
このロープは『カウェレウェレ』と言って、カヌーの横転を防ぐものだ(*2)。
それを持っているのがカフナ、カヌー造りの監督さんたちだ(N.2)。」
首長が念押しする
カカエは、「この指示を忘れるんじゃないぞ!」 と、 ケクプアと従者たちに念を押しました。
それから、さらにこう指示したのでした。
「メネフネたちに出会ったら、この仕事の注文を出して、
カヌーを海に引き出す道すじを教えて上げなさい。」
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) パレ(pale):
ハワイ語のパレには 「守る」 と言う意味があります。
このお話しの棟梁パレは、山の中で完成したカヌーをうまく誘導して、海辺まで安全に引き出します(*3)。
そのために、パレはカヌーの動きをいつも監視していて、作業者に指示したり自らカヌーを押したりします。
(N.2) カフナ(Kahuna):
ここで言うカフナはカヌーの専門職人で、より正確には 「カフナ・カライ・ワア(kahuna ka.lai wa'a)」と呼ばれました。
当時のハワイ社会では専門職人だけでなく、様々な分野の専門家がカフナと呼ばれ、その代表格が神官・医者・呪術者などでした。
厳しい階級社会だったハワイでは、カフナは支配者階級アリイ(首長)に次ぐ地位にありました。
(注記)
(*1) T.G.Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, X. Stories of the Menehunes, Kekupua's Canoe Thos.G.Thrum, p.114-116.
(*2) Polynesian Voyaging Society: (Home Page)/Canoe Building/Parts of a Traditional Canoe.
(*3) N.N.Y.Chun & R.Y. Burningham(1995): Hawaiian Canoe-Building Traditions, Revised Ed. Kamehameha Schools Press, Honolulu.