(前回からの続き)
ワオラニの不思議な夜 (N.1)
真夜中、彼らは誰かがハミングする声を聞きました(*1)。
その声は、彼らのすぐ近くから聞こえて来ます。
しかし、洞窟の外をのぞいて見ると、誰一人いませんでした。
その後、夜明けと共に、洞窟の外は再び静寂に包まれました。
そして日が昇ると、ああ、何ということでしょう!
彼らの目の前に、大量の石が積まれていたのです。
どうやら、それはヘイアウ、すなわち神社のようでした。
そして今でもその遺跡は、人目を引いているそうです。
首長カカエに報告する
ケクプアと従者たちは首長(カカエ)の下に戻って来ました。
そして、「あちこち探したのですが、結局、うまく行きませんでした。」 と報告しました。
さらに、望み通りのカヌーを造るのに、ちょうど良いコアの木が無かった旨を、こと細かく説明しました。
それに加えて、ワオラニの不思議な出来事についても、首長にお話ししました。
それを聞いた首長のカカエは、メネフネの子孫でした。
ですから彼は直ぐに、その不思議な出来事がメネフネの仕業だと気付きました。
カネの夜のハミングを待て! (N.2)
そこで彼は家臣ケクプアに、こう指示しました。
「まずはマカホとカマケラの地まで行きなさい。
そしてカネの夜まで、そこに留まるのだ。
その夜が来たら、プウヌイまで上って行きなさい。
そして、メネフネたちのハミングと話し声が聞こえるまで待つのだ。
--- 恐らくそれが、彼らがカヌーを完成させた、と言う合図なのだから。」
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) ワオラニ(Waolani):
・ワオラニは古くから、神秘的で神聖な地とされてました(*2)(*3)。
そしてハワイの島々や人を生んだ神ワケアは、ここで生まれたと伝えられています。
・また神のために初めてヘイアウが造られたのが、ここワオラニの地だと言われています。
その後も、ヌウアウ谷を見下ろすように、幾つかのヘイアウが造られました。
・さらにメネフネについての伝説も、ワオラニやヌウアウには数多く残されています。
その中には、この2つの谷に住むメネフネが、大きな石をめぐって争った、と言うお話しもあります。
(N.2) カネの夜(the night of Kane):
カネの夜とは、新月の翌日(ヒロ(Hilo))を第1日目とした場合の27日目の夜です。30日目が新月ですから、この夜の月はかなり細くなっています。
なおカネは生命の神様で、ハワイの4大神の中でも最高位にある偉い神様です。
(注記)
(*1) T.G.Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, X. Stories of the Menehunes, Kekupua's Canoe Thos.G.Thrum, p.114-116.
(*2) T. Stell Newman et al.(1973): Analysis of the Moanalua National Historic Landmark Application Significance Statement, State of Hawaii, Ⅱ.Theses Analyses, F. First Heiau at Waolani (p.28-29) and N. E'pa Land.(p.37-38).
(*3) Windy K. McElory et al.(2007): FINAL—Archaeological, Ethnographic, and Biological Survey of TMK: (1) 2-2-051:054, Nu‘uanu Ahupua‘a, Kona District, Island of O‘ahu, Hawai‘i.