夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

020 ケクプアのカヌー:(2) カネの夜のハミングを待て!


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(前回からの続き)

ワオラニの不思議な夜 (N.1)

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真夜中、彼らは誰かがハミングする声を聞きました(*1)。

 

その声は、彼らのすぐ近くから聞こえて来ます。

しかし、洞窟の外をのぞいて見ると、誰一人いませんでした。

 

その後、夜明けと共に、洞窟の外は再び静寂に包まれました。

そして日が昇ると、ああ、何ということでしょう!

彼らの目の前に、大量の石が積まれていたのです。

 

どうやら、それはヘイアウ、すなわち神社のようでした。

そして今でもその遺跡は、人目を引いているそうです。

 

首長カカエに報告する

ケクプアと従者たちは首長(カカエ)の下に戻って来ました。

そして、「あちこち探したのですが、結局、うまく行きませんでした。」 と報告しました。

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さらに、望み通りのカヌーを造るのに、ちょうど良いコアの木が無かった旨を、こと細かく説明しました。

それに加えて、ワオラニの不思議な出来事についても、首長にお話ししました。

 

それを聞いた首長のカカエは、メネフネの子孫でした。

ですから彼は直ぐに、その不思議な出来事がメネフネの仕業だと気付きました。

 

カネの夜のハミングを待て! (N.2)

そこで彼は家臣ケクプアに、こう指示しました。

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「まずはマカホとカマケラの地まで行きなさい。

そしてカネの夜まで、そこに留まるのだ。

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その夜が来たら、プウヌイまで上って行きなさい。

そして、メネフネたちのハミングと話し声が聞こえるまで待つのだ。

--- 恐らくそれが、彼らがカヌーを完成させた、と言う合図なのだから。」

 

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) ワオラニ(Waolani):

・ワオラニは古くから、神秘的で神聖な地とされてました(*2)(*3)。

そしてハワイの島々や人を生んだ神ワケアは、ここで生まれたと伝えられています。

・また神のために初めてヘイアウが造られたのが、ここワオラニの地だと言われています。

その後も、ヌウアウ谷を見下ろすように、幾つかのヘイアウが造られました。

・さらにメネフネについての伝説も、ワオラニやヌウアウには数多く残されています。

その中には、この2つの谷に住むメネフネが、大きな石をめぐって争った、と言うお話しもあります。

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(N.2) カネの夜(the night of Kane):

カネの夜とは、新月の翌日(ヒロ(Hilo))を第1日目とした場合の27日目の夜です。30日目が新月ですから、この夜の月はかなり細くなっています。

なおカネは生命の神様で、ハワイの4大神の中でも最高位にある偉い神様です。

 

(注記)

(*1) T.G.Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, X. Stories of the Menehunes, Kekupua's Canoe Thos.G.Thrum, p.114-116.

(*2) T. Stell Newman et al.(1973): Analysis of the Moanalua National Historic Landmark Application Significance Statement, State of Hawaii, Ⅱ.Theses Analyses, F. First Heiau at Waolani (p.28-29) and N. E'pa Land.(p.37-38).

(*3) Windy K. McElory et al.(2007): FINAL—Archaeological, Ethnographic, and Biological Survey of TMK: (1) 2-2-051:054, Nu‘uanu Ahupua‘a, Kona District, Island of O‘ahu, Hawai‘i.