(前回からの続き)
穴に潜んで彼らを待つ
おばあさんに言われて、ラカは再び山に入り、お誂(あつら)え向きの木を見つけました(*1)。
しかし彼はそれを切り始める前に、横に大きな穴を掘りました。
穴の中に 「カララ・カマヘレ(Kalala-Kamahele)」を倒れ込ませよう、と考えたからです(N.1)。
計画は完璧でした。
実際にその木を切って見ると、木はその穴というか溝の中に、思った通りに倒れ込みました。
そして木に続いて、ラカ自身もその溝に飛び込み、横になって身を隠しました。
彼はその溝の中で、「奴」 いや「奴ら」(?)が現れるのを、じっと待つことにしたのです。
「奴ら」って誰のことだって? そりゃー決まってますよ。
ラカが木を切り倒す度(たび)に、その木を夜中に立て起こした、あの「奴ら」ですよ。
話し声 そしてチャント
こんな風にして待っていると、誰かの話し声が聞こえて来ました。
その声は、彼が切り倒した木を、立て起こして元の姿に戻そう、と話していました。
そして、お次は歌声。誰かがこんなチャントを歌っていました(N.2)。
おお! 4千の神々よ、
4万の神々よ、
40万の神々よ、
列をなした神々よ、
寄り集まった神々よ!
これらの森の神々よ、
あの山の、
そしてあの丘の、
またこのダムの神々よ、
おお、来られよ!
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) カララ・カマヘレ(Kalala-Kamahele) :
「カララ・カマヘレ」の部分は、ハワイ語で記載されたままで、英訳などもありません。お話しの流れから推測すると、「見事な大木」 と言った意味かも知れません。
なお、古代ポリネシア人のカヌーを複製した「ホクレア」の、伴走船の名前は カマ・ヘレ(Kama-Hele;ここでは「旅人」の意味)でした。
(N.2) チャントを歌う(chanting) :
原文では、以下に続くチャント本文はハワイ語で記載され、脚注に英訳が付いています。ここでは、その英訳を基に和訳しました。
(注記)
(*1) T.G.Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, X. Stories of the Menehunes, Laka's adventure Thos.G.Thrum, p.111-114.